民営化のお手本だったイギリス水道が経営危機でも、日本はウォーターPPPで水道民営化を進めるのか?

2018年、水道法改正により水道民営化(PFI/コンセッション)への移行が容易となった日本。
その際、「民営化がうまくいっている事例」と説明されてきたのがイングランドの水道

1989年の完全民営化され、約30年で「民営化のお手本」であったはずのイングランドの水道が、経営危機に陥っているというニュースが入っています。
経営者たちは1億円以上の年収をもらっているのに、東京の30~40倍にあたる漏水。
100年以上安定的に運営した公営水道がいくつもあるのが、日本の公営水道

どちらが優秀なのか、実績を見れば一目瞭然ではないでしょうか…。

しかし、日本政府は
「コンセッションに段階的に移行するための官民連携方式(管理・更新一体マネジメント方式)を公共施設等運営事業と併せて「ウォーターPPP」として導入拡大」しようとしています。

ウォーターPPPについて <国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部> 令和5年6月
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001617674.pdf

PP/PFI推進アクションプラン (令和5年改定版)の概要 <内閣府>
https://www8.cao.go.jp/pfi/actionplan/pdf/actionplan_r5_1.pdf

ウォーターPPPで、10年間で水道100件、下水道100件、10年かけて、コンセッションに段階的に移行させる…。
民営化のお手本と説明したイギリス水道すら、もはや経営危機。
それでも日本は、水道民営化を進めるべきなのでしょうか。

以下、参考記事のご紹介です。

【第一生命経済研究所2023/7/3】サッチャー改革の終わりの始まり ~民営化された水道会社が経営難に~

英国ではサッチャー時代に民営化された大手水道会社が経営難に陥っている。巨額の投資負担や利払い負担の増加に苦しんでおり、既存株主に追加増資を求めたが、資金調達が難航している。事業再建を進めてきた最高経営責任者の突然の辞任と、政府と監督機関が国有化の可能性を検討していることが明るみに出て、関連資産の売りが加速した。再国有化の阻止を目指す既存株主が追加支援の方針を発表、追加の財政支援に否定的な政府も税金投入による水道会社の救済には慎重とならざるを得ない。来年の総選挙で政権奪取が確実視される労働党は、前回の総選挙で前党首が掲げた鉄道や公益企業の国有化の公約を撤回したが、今回の問題発覚を受けて何らかの公的関与の強化を検討する公算が大きい。サッチャー時代以来の英国の民営化モデルが軌道修正される可能性がある。

サッチャー改革の終わりの始まり ~民営化された水道会社が経営難に~

【東洋経済2023/8/2】お粗末なロンドンの水道が示す「民営化」の末路 老朽化で水漏れに汚水放流、再国有化に支持

ロンドンを含むイングランド南東部の約900万人への水道供給と、約1500万人の下水処理を手掛ける英国最大の水道会社「テムズウォーター」が経営危機に瀕している。

同社は老朽設備の更新費用や環境規制対応など巨額の設備投資負担を抱え、2022年以来、株主に対して2025年3月までに15億ポンド(約2700億円)の追加出資を求めていた。2023年6月末時点で同社が調達できたのは5億ポンドにとどまり、残り10億ポンドの資金調達は難航していた。

こうした状況下で飛び出したのが、経営トップの辞任報道だった。

https://toyokeizai.net/articles/-/688072

【President2023/12/3】水道会社の社長たちが軒並み年収1億円以上に…イギリスが「水道の完全民営化」を後悔しているワケ 進んだのはインフラの維持管理ではなくマネーゲーム

水道事業は民間企業に任せてもいいのか。各国の水道事情に詳しい実業家の加藤崇さんは「イギリスは1989年に水道局を完全民営化している。その結果、水道料金は上がり続ける一方、水道サービスの質は大幅に低下した」という――。

ロンドンだけでも年間平均6000件もの漏水が発生
イギリスの水道管が経年劣化していると聞いても、歴史の長さを考えれば、誰も驚かないかもしれない。だが、現状は想像以上だ。

政府統計(『Discover Water』)によると、イギリスの水道管路の総距離は、約34万5000キロある。日本のそれは67万6500キロだから、本州ほどしかない国土の面積に比例する形で、イギリスの水道管路の長さは、日本の約半分だ。

『BBC NEWS』によれば、水道管路(水道本管と呼ばれる、家屋の真下ではなく、道路の真下を通っている水道管路)では、首都ロンドンだけでも年間平均6000件もの漏水が報告されている。東京都は年間200件弱だから約30倍。面積の違いを考えるとざっと約40倍の頻度になる。

これらすべてに対応して水道管の適切な更新を行うとすると、向こう30年で1450億英ポンド(約21兆3700億円)ものお金がかかると試算されている。

それでいて、イギリス全体に布設されている水道管路の60%について、布設年度(配管の年齢)がわからないという。

水道会社の社長たちが軒並み年収1億円以上に…イギリスが「水道の完全民営化」を後悔しているワケ 進んだのはインフラの維持管理ではなくマネーゲーム